「気まぐれロボット」
うっすらとした記憶しかないが、おそらく小学校1年生くらいだったと思う。
父が読んでいた「気まぐれロボット」を盗み読んだのがはじまりだ。
字なんてひらがなしか読めないはずなのに、登場するN氏やS氏の言動にわくわくした。
我が家は商売をやっていたから、家の大半は店になっており、小さなスペースで家族6人が生活をしていた。当然友達を呼べる場所はなく、外に出て遊ぶか友達の家に行くかそのどちらかしかない。
だから、星新一のショートショートは、いつも誰かが訪ねてくる所から始まるのが特に好きだった。
みんな働いているから、家に帰ってもだれも相手をしてくれない。
平凡でたいくつな私の日常に、ある日突然「ノックの音」がして、わけのわからない話を始めてくれないかなぁ、なんて。
7才の少女の頭の中には、N氏やS氏がいつでもそばにいてくれた。